9月29日(日)、『あるいは佐々木ユキ』は、待望の、仙台市大手町のギャラリー「ターンアラウンド」での上映です。
ターンアラウンドでは、昨年8月に『わたしたちの夏』を上映してもらいました。運営する関本欣哉さんは、二つの作品に本人役「千石先生」で登場する千石英世さんの教え子。福間健二作品の東北地方プレミエ上映がこういうかたちでおこなわれるのは、このご縁のおかげです。そして今年は、ギャラリー隣のカフェ「ハングアラウンド」で、福間健二展覧会もこの日から2週間開催されています。昨年前橋で行なわれた朔太郎賞受賞者展覧会の縮小版ですが、そのとき展示されなかったものも今回はたくさんあります。
さて、福間監督は、12時すこし前に会場に到着。音と映像を慎重にチェックしました。

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一回目の上映は、12時半の予定を5分ほど遅れてスタート。人の集まり方も、雰囲気も、映画館とはちょっと違う感じですが、画面で文月悠光さんのインタビューがはじまるともうそこは福間ワールド全開。
福間監督は、この上映中に近くのとんかつ屋さんで例によっておいしそうにカツ丼を食べていたそうです。

14時からの「朗読とトーク」。前半が朗読です。
まず、『あるいは佐々木ユキ』で使われた「青い家」「光る斧」「週替わりの部品交換」から。福間監督は撮影台本を出して、撮影に入る段階で、自分の詩や文月悠光さんやアゴタ・クリストフなどのテクストがどういうふうに用意されていたかを話しました。
『あるいは佐々木ユキ』は、2011年の冬に撮影され、モノレールからの実景撮影の部分を「震災」の一週間前の3月4日におこないました。
福間監督は「震災」のあとの時間の流れを語ります。
『わたしたちの夏』と『あるいは佐々木ユキ』の編集・仕上げをおこなう一方で、詩をどう書いていったか。そして、昨年仙台を訪れたときに受け取ったものから生まれた作品もあるとのこと。
そこから、福間健二の、いわば「震災以後の言葉」が読まれていきました。「八月、何も隠れていない」「もうすぐ春ですね」「三月の扱いにくい要素」(以上、未発表の作品です)、2011年の後半の気分を書いた「秋をたのしむ」「落ち着かない気持ち」「何をやってきたのか」、そしてツイート詩からは「その手がさわってきたもの」。
「毎朝のツイート詩、本気で書いている。いままでとはちがうかたちで発表し、反応をもらっているのが新鮮。このあとは、電子書籍で詩集を出すことを考えている」。
朗読の最後は、今年一月に書いた「落としましたよ」。最近のもので本人がいちばん気に入っているものだそうです。

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トークのお相手は、ご本人もアーティストである関本欣哉さん。
「自分たちは、なにかに縛られて生きている。それを崩して自由になることの大切さを『あるいは佐々木ユキ』に教えられました」と関本さんは口火を切りました。
「自由になって遠くまで行けるか。行けたらおもしろい。そう感じている一方で、人でも物でも風景でも、自分のまわりにあるものを大切にしている。身近なものを引きずりながら、ふしぎな場所に行けるかどうか。また、行ったところからどう帰ってくるかを考えています。たとえば、千石先生とユキの会話。声の処理としても、フィクションと現実、遠くと近くのものが重なりあって出てくるようにしました」。
「モノレールの車窓の風景が印象的ですが」と関本さん。
「乗り物からの風景は、それ自体映画的であり、安くも撮れるので、いつも使っている。とくにモノレールの風景は、鈴木一博カメラマンの集中力のおかげもあって、ただ空間としてあるだけでなく、時間を感じさせるものになっていると編集しながら感じました。遠くの山のむこうに過去があり、進んでいく先には震災以後という未来がある、というふうにです」。
関本さんは言います。「すごくきれいですよね。その風景とともに福間さんの詩がリアルになり、佐々木ユキがだれもが自分がユキだと感じられる存在になっていきます。自分自身が問いかけられているような……」。
「映画は、世界の見え方を揺さぶってくれる。外国の監督が撮ったみたいに日本の風景を撮ることができたらいいと考えていました」。

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ユキとユキbのあり方については、ユキbを演じた川野真樹子さんが『わたしたちの夏』では小原早織さんのサキの幼なじみだったことにも触れて、
「『わたしたちの夏』と『あるいは佐々木ユキ』をあわせて編集したら、デヴィッド・リンチの作品みたいになる。そうなってもいいという姉妹篇なんです。そして、川野さんはワルをやりたがっていたんです」と福間監督は楽しそうに話しました。

客席から質問も出ました。「生きていればいい」というテーマやかるたのシーンの意図などについて。
福間監督はメリハリよく答えていました。そこで浮かびあがってきたのは、福間作品でのシナリオのあり方。シナリオどおりにならなくてもいいという撮り方の自由さ。それによって、ユキの小原早織さんをはじめ、出演者たちの「生」そのものが役のなかに溶け込んでくるみたいですね。
「詩を書くのと映画を撮るのは別のことじゃない。そういうところに来た気がしています。でも、映画はスタッフ・キャストと一緒に作っている。シナリオとは違うようにやろうとしすぎるときに、そんなに勝手にやっちゃいけないと引き戻されることもあります」。

詩と映画のこれからについて、福間監督はこう語りました。
「現実的な条件ではもう生きられないというところに追いつめられても、人は生きなくてはならない。そこに詩が必要だ。値段の高い詩集や限られた高級な場所に閉じ込めないで、いろんなところで読者と出会えるようにしていきたい。ツイート詩もやっていくし、電子書籍で出す選詩集も質の高いものにしたいです。映画は、安く作っているんだけど、それでも製作費を回収できない。それが苦しいところですが、もっと安い作り方と内容的にもっと広がりをもつ作り方の両方を考えていって、作りつづけたいです」。

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トークのあとも、16時からの二回目の上映がはじまるまで、福間監督は気さくにみなさんと話していました。展示されている自分の使った台本を見ながら「これでよく撮れるなあ」と苦笑したり、一年に一冊のペースで出していたころの詩集の安い作り方を説明したり、これから映画や詩をやろうとしている人たちに伝えたいことがたくさんある様子です。
二回目の上映中は、車で案内してもらって仙台で開催中の二つの個展を見に行ってきました。「自分でなにか作るってこと、それだけですごいことなんだよね」。

19時からの打ち上げには、なんと千石先生が東京から駆け付けてくれました。大学院時代からの友人である千石先生と福間監督。二人とも、いったい何歳なんだろうという話し方、飲み方、そして食べ方です! 牛タン、お刺身、金華サバの開き、定義山の三角あぶらあげなどなど、次々に出てくる仙台のおいしいものにニコニコしながら、みなさんと楽しい時間をすごしました。
「また仙台に来てください。次も期待しています」という声に、福間監督は、鹿児島上映につづき、ここでも大いに勇気づけられたようです。

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仙台のみなさん、『あるいは佐々木ユキ』を熱心に見ていただき、ありがとうございます。上映会スタッフのみなさん、ご協力してくださったみなさん、ほんとうにお疲れさまでした!
カフェ ハングアラウンドでの福間健二展は、10月13日(日)まで。福間監督の赤ん坊のときの写真から『あるいは佐々木ユキ』のチラシの試作ヴァージョンなどまで、珍しい展示物がたくさんあります。撮影台本や詩集を手にとって中をあけてご覧いただけます。ぜひ見に来てください!


宣伝スタッフ 青葉カウガール