9月22日・23日の連休、福間監督には深い縁のある鹿児島で、昨年の『わたしたちの夏』につづいて、『あるいは佐々木ユキ』がガーデンズシネマで上映されました。

桜島は、8月後半の大噴火の後も毎日モクモクと噴煙を吐いています。空港から市内へ向かうバスの中、まるで入道雲のような噴煙を見ながら、鹿児島の人々の暮らしはこの「生きている」桜島ぬきにはあり得ないのだとあらためて感じます。降り積もる灰を掃き集めることから毎日が始まるのでしょう。道路も舗道も、きれいにされていて灰はうっすらです。鹿児島の人々には、雄大な桜島を誇りに思う一方で、たいへんな生活があるのですね。

1

さて22日(日)、福間監督は1回目の上映が終わるころ午後4時30分に、天文館マルヤガーデンズ7Fにあるガーデンズシネマに到着。すっかりお馴染みになった支配人の黒岩さんとスタッフの鮎川さんが笑顔で迎えてくださいました。「大勢の方がみえてますよ」の黒岩さんの言葉に、福間監督の緊張はほぐれて、笑顔で挨拶に登壇しました。

1

「去年の『わたしたちの夏』につづいて、ぼくの大好きな鹿児島で新作『あるいは佐々木ユキ』を上映してもらえることを、ほんとうにうれしく思います。この映画は、主役に決めていた小原早織さんが2011年3月からフランスに留学することになったので、その年の新年早々に撮影しました。それも、小原さんの事実を逆に使って主人公はフランスから帰ってきた女の子に設定しました。1月は1週間ほどで撮影終了して、3月4日に風景の追加撮影をしてすべてを終了したのですが、その1週間後に3.11が起きたわけです。編集作業に入ったのはずいぶん経ってからだったんですが、やはり世間も自分も3.11前とは意識がちがってきている。2012年の夏に編集を終えるまで、そのことを感じながらやりましたね。
これまでの上映で同じことを何度も話してきているので、鹿児島ではみなさんからの質問があればお聞きしたいです」。
福間監督は初めにそう話しました。

1

支配人の黒岩さんからタイトルについての質問が出たあと、客席から手が挙がりました。男性の方です。
「詩を通した世界観はちょっと難しかったですが、単純にビジュアル的なところで、モノレールからの景色と町の風景、そしてキラキラ輝く夜の風景、そのなかで物語が進行していくのがとても心地よかったです」。
「ぼくは乗り物の中から撮ることを前の作品でもやっていますが、これはカメラマンの鈴木一博さんが撮ればこそなんですね。位置を決めてそこで鈴木カメラマンがかまえれば、もう言うことなしの画が生まれるんです」とうれしそうな福間監督。

つづいて女性の方から「出演しているのはみんな俳優さんですか?」の質問。
「小原さんが元々は俳優をめざしていたこと、千春さん役であり『わたしたちの夏』主演の吉野晶さんは女優であること、この二人以外はみんな素人。でもそれぞれに自分の表現を持っている人たちがほとんどなので、現実の自分を出しながら個性を持った存在として演じてくれたと思います」と福間監督。

ここで、思いがけない人の登場です!
『あるいは佐々木ユキ』のスタッフとして活躍してくれた、当時首都大の大学院生だった坂元小夜さんです。いま彼女は福岡に住んでいて、今日の上映に鹿児島まで来てくれたのです。
「映画の現場は初めてだったんですが、1月の寒い時期で、朝から晩までで、待ち時間が長いのに驚きました。本番中は、お腹が鳴らないようにと気にしてました」と坂元さん。
福間監督はすかさず「うちの現場は一日の撮影時間も短い方だし、待ち時間も短いんだよ」。「えーー、そうなんですか!?」と坂元さん。
確かに福間組は、朝の集合時間も特に早いわけではないし、待ち時間も短い方だけど、ほとんどの撮影を寒い寒い1月の6日間で撮ってるわけだから、初めての人にはきびしかったですよね。

1

「『ユキ』は、詩を書くことと映画をつくることがひとつになれたかなあ、ある意味での到達点に来たかなあと思ってます。それがいいことがどうかはわからないけれど、次は少しちがうものをめざします」と福間監督は最後に言って、鹿児島第1回目の上映後トークを終えました。

ロビーと通路には、17時40分からの次の回に来てくださったお客様がすでに並んでおられます。旧知の友人の顔もあります。うれしいことです!
2回目、福間監督は上映前の挨拶を簡単にして「朗読から上映へ」を行ないました。鹿児島までの各地での上映で行なってきた「声から映像へ。耳から目へ。」です。ここガーデンズシネマでは、劇中で良平さんを演じた萩原亮介さんが朗読している「天使をすてる2011」と、キャッチコピー「もうすこし歩いてもうすこしへんになってみる」の「もうすこし」の2編を読んでから上映に入りました。

ところで、ガーデンズシネマでは昨年8月からデジタルシネマ化をめざして募金活動を行なってきて、その募金と借入金で導入を実現し、この9月7日から新しいデジタル上映を開始したところです。そのニュースを知っていたtough mamaプロデューサーは、2回目の上映を鑑賞しました。冒頭からおどろきました。光と影のバランスのとれた画の美しさと、硬すぎず柔らかすぎずの音の心地よさには、唸るほどにびっくり! こんなにもちがうものかと感心しました。画と音のすばらしさをよく言われる『ユキ』ですが、DCP導入直後のガーデンズシネマで見ることの出来た鹿児島の人たちは、絶対幸運だったと思います。そして、そのとおりの感想をたくさんいただいたのも、事実です。


23日(月・祝)の、3回目で最後の上映は18時半からなので、福間監督は昼間しっかり遊びました。と言っても食いしんぼなので、食べることと温泉に入ることが鹿児島でのいつもの過ごし方ですね!
今夜の交流会をしてくれる「吉次郎」店主とバイトの茜ちゃんと一緒に、おいどん市場に買い出しの後、「ふくまん」のラーメンに大感激! それから「いづみ」のコーヒーを堪能。いったんホテルに戻ってから近くの銭湯(鹿児島の銭湯はすべて温泉です!)「霧島温泉」で汗を流す。これ、最高の鹿児島の一日です。

連休最後の日の夜にもかかわらず、3回目の上映にもたくさんの方が来てくださいました。そして上映後の質問・感想は活発でした。

まず手が挙がったのは、映画をよく見ている男性。
「『急にたどりついてしまう』は映像が粗くて苦手だったけど、『ユキ』はすばらしかったです! 日本のゴダールかと思いました。最近見た映画では『トゥーザワンダー』以来すばらしかった。映像がすばらしい。ライティングはしてるのですか?」と。
「してません。映るままでいこうと決めて、カメラの鈴木一博さんにまかせてるんです。『急たど』のときは、なにか大変なことをした方がいいものができるんじゃないかと思うところがあったけど、いまはできるだけ簡単にやることでいいものができるんだと思えるようになった」と福間監督。

それからやはり、映画をよく見ていると思われる女性からの質問です。
「この映画唯一のエロティックなシーンが、Kが登場して足を洗うところだと思いますが、このKはユキの父か兄の象徴ですか? もうひとつ、ウェールズのスプーンのところ、さすが福間監督、ウェールズが登場した! と思いましたが、ユキがお金ではなくこの魔法のスプーンを選ぶのは?」。
いやー、みなさん、ちゃんと見てますねえ。
福間監督は答えます。
「エロティックな場面を考えたとき、シャワーを使う、これで人を惹きつけることができるんじゃないかと思ったんです。現実の存在ではないものは、夢として受け入れることができるとも。Kはどこから出てくるか、この場所のロケハンはしまくりましたね。あまりに暗くてもホラーみたいになるので、実際に使ったあのマンホールのような場所なら現実から遠くもないのではないかと。
スプーンは、『ユキ』がおとぎ話でもあるということから、また身近にあったものでもあることから使った。で、おとぎ話から学ぶことは、大きいものを選ぶと(欲ばると)不幸になる、小さいもの(一番得しないもの)を選ぶと幸せになるということで、ユキに一番小さなスプーンを選ばせた」と福間監督です。

1

さらに別な男性から鋭い指摘が出ます。
「Kとユキbは足に同じアザ?を持ってますが、この二人の関連性は? それとカルタのシーン、すばらしかったですが、これはホンがあってそのとおりなのか、素のままなのでしょうか」。
「Kとユキbは、ユキの夢の中の存在ともいえるんですね。どこの誰でもない。そういう存在としての共通のマークなんです。あれはぼくが描いたんですが、カメラの一博さんに「林」に見えないかなんて言われましたね(笑)。
カルタについては、同じことをよく聞かれてきました。あれは、ちょっとやってみようかと、カメラを回しながら二人に始めてもらったんですね。見てると、これは2度やれるものではないことがわかってきたし、二人ともノってきたんでそのまま続けてもらったんです。だからこれを本番だと意識していたのはぼくと一博さんだけで、ほかのスタッフはみんなテストだと思ってたはずです」と福間監督。
黒岩さんもすかさず言います。「演技は、結局テストであっても、最初のテイクが一番だってよく言われますよね」。
「ぼくはNGもキープするんです。イーストウッドはファーストテイクのみ。だから速いんですよね。ぼくも速いんだけどね(笑)」。

さて、時間もなくなってきて、黒岩さんから次作について尋ねられた監督は答えます。
「詩がじゃましているものがあるとすれば、詩から離れて、詩を隠して撮っていきたいと考えています。来年はぜひ撮りたいです。そしてまた鹿児島のみなさんに見てもらいたいです」と監督は結びました。

このあとの交流会で、居酒屋「吉次郎」に集った人は約20人。映画好きの人も、『わたしたちの夏』を見てくれて福間映画のファンになってくれた人も、詩人も、呑んべのおじさんも、みんなそれぞれに「『ユキ』はすばらしかった!」と声にしてくれて、福間監督の幸せはこの上ないものでした。
理由はその幸福からだけではなく、鹿児島「吉次郎」での恒例でもある福間「舞踏」が夜半に登場! おなかをかかえての大爆笑の店内をもっと驚かせたのは、つづいて披露された黒岩支配人のダンス! 文句なしに黒岩さんの大勝ちでしたね。
最高の夜でした。
だから、鹿児島に来ずにはいられません! 大好きです!

1

ガーデンズシネマのみなさん、ほんとうにお世話になりました。
詩人協会に呼びかけてくださった高岡さん、山下さん、そして吉次郎と茜ちゃん、そして『ユキ』を見てくださったすべての方々に感謝します。
ほんとうにありがとうございました。


宣伝スタッフ:ヘチマ娘