アップリンクでの『あるいは佐々木ユキ』上映も、終盤を迎えました。
4月17日(水)のトークゲストは福崎星良(ふくざき・せーら)さん。今年2月に開催された第5回恵比寿映像祭で、唯一の学生作品として彼女の『Come Wander With Me』が選ばれて、大きな話題になりました。
星良さんは、小さいころからインドへたびたび長期滞在し、高校時代にアメリカ、カナダのアートスクールに留学して、4年近くを海外で生活したという経験の持ち主です。帰国してからは、早稲田大学川口芸術学校に進み、この3月卒業したばかり。イラスト、ポスターデザイン、ビデオアート、ミュージックビデオ、映画、アニメーション、ドキュメンタリー、写真など、その活動はジャンルを超えて幅広い表現をめざしている24歳のすてきな女性です。
今日のトークは、恵比寿映像祭よりも早くにアップリンクでの『Come Wander With Me』の上映を手がけた藤井裕子支配人が、福間監督と星良さんの「ある共通性」にかねてから着眼していたことが、実現への運びとなりました。

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トークは、星良さんの『あるいは佐々木ユキ』への感想から始まりました。
「『青い家』の詩が朗読されるくだりで、涙が出ました。ユキと同じような気持ちを、自分も抱えているのだと。この映画は、女の子の女性的な映画であると同時に、福間監督の目線が包みこむ男性的な映画でもあると思うんです。大人が見ている、まわりがあたたかいなあと」。
「あそこの詩の流れるシーンは、ユキのかなわない恋や孤独な気持ちが表面的には見えていないけれど、この世界には悲しいことがある、そういう表現にしたくて、あとからこの朗読を入れたらぴったり合ったんです」と福間監督。
「福間監督は、ユキや他の役者たちと話しながら進めていくとか、現場にあったものをとっさに使うとかということですが、それ、いいなあと思う。『ユキ』のなかで、女の子が遊んでる感じがあちこちにあって、でもそれだけではなくて、少女と大人の両方が存在してる。遠くにあるけどじつはそこにある、はっきり見えないけど暗闇の中にある、そういうところがいいです」。星良さんの声は、やさしくて、とても落ちついています。

福間監督「ぼくの映画は、星良さんの作品に比べたらふつうの劇映画だとも思う。劇映画にあこがれた自分があって、そこから抜けられない気持ちと、もっと自由にやっていい気持ちに引き裂かれている。表現はひとつのトーンで統一されているより、グラデーションが起こっている方がいいと思うんだよね」。
「詩を書くときと似てるんですか?」と星良さんの、勘のいい質問です。
「だんだんそうなってきている。なぜ詩なのか、なぜ映画なのか。きちっと描写すること以上に何ができるのか。詩は、物語を暗示する。民話や童話はきちんとかかれていなかったりするけど、それでいいんじゃないかと。映画を編集する過程は、詩の推敲と変わらないかな……」と福間監督。
「詩を読んだあとのような印象があります。映画的であったり、詩の未知数なところであったり。日常のリアリズムと、映画のリアリズムと、詩のリアリズムがある。その自由さにあこがれるところもあります。劇映画の現場に2か月いたのですが、すごいなあ、素晴らしいなあと思う反面、やっぱり自分はホームムービーもやりたいと引き裂かれたり……。『ユキ』はその中間にあるのかな」と星良さん。

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星良さんの作品を見せてもらって刺激を受けた福間監督は、ツイッターでこう言っています。
「福崎星良監督の55分の作品『Come Wander With Me』と13分の作品『Neon Lights』。宇宙があって、世界があって、リアルとファンタジックの両面をもつ東京があって、人それぞれの生きている場所がつながりあっているなかに、生きることへの問いかけがある。星良さんの作品を見て、まず思ったのは、自由にやるっていろんなやり方があるんだってこと。ぼくたちが、ひとりで生きているわけじゃないと同時に、国や言語の枠に縛られることはないということ。そして、ジョナス・メカスを視野に入れたところから、もう一回映画を考え直してみようということ。」

星良さんは言います。
「『Come Wander With Me』では、自分で自分のことを語っていたり、人にセリフを渡して自分になってもらったりと、何人もの自分を登場させています。ユキが『佐々木ユキです』と3回言うところ、自分を確かめる以上に、ユキが何人もいるようなところが、似ていてびっくりした。ユキがわたしでもあったり、あの子でもあったり、bでも、ブタでもあったりする。孤児ならよかった、もふくめて、監督は女の子のことがなんでわかってるんだろう? 若い女の子をよく観察してるのかな……」。
すると福間監督は「観察してないんです。自分が若いときと変わってないからかな。ぼくは若いときから親の存在について疑問があったから、孤児だったらよかったのに、と思ってるところがあった。自分にもし子どもがいたら、子どもが18歳になったら100万円あげて放り出せばいいと思ってる」。

星良さんは『ユキ』のことを、「お砂糖菓子の時代」というタイトルで自分のブログに掲載してくれています。
一部を引用させてもらいますね。
——女の子の少女期のころ、あるいはもっとあとの、チョウチョの羽がまだ羽化したばっかりの、まだ模様も色もハッキリしてないし、でもひらひらちゃんと舞う事が出来る、あのうす白い感じ、というのでしょうか、ゆらゆらしていて透き通っているのに、向こう側が見えるようで見えないような、ナイフを背中でかくして研ぎながら、もう大人の世界も知ってるんだけど、処女性も、母性も同時に内在している時期。世界と自分の隙間を真っ正面から眺めてる、そんな時代の淡くて、「永遠のあこがれ」の時代。——

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「わたしは八王子が実家なので、あのあたりのふんわりした景色がなつかしかったです。クレジットに撮影日が出ていましたが、震災前に撮影したんですね。震災後に構成もしたんですか?」と星良さん。
「モノレールからの景色だけの部分は震災の1週間前に撮った。編集は、前作の『わたしたちの夏』も『ユキ』も震災後なんだけど、モノレールにかぶせて千石先生が過去を語り、ラストでモノレールから見える空の光、これは過去から未来、つまり3.11以後へとつづくものだと、編集の過程で自分で思ったんですね。映画は撮ったあとも表現がつづいている」と福間監督。
「震災後、メッセージ性の多い作品がたくさん出てるけど、『ユキ』はメッセージ性がないのがよかった。『Come Wander With Me』は、3.11のあとに撮ったんだけど、帰国子女や外国人の友だちは日本を離れるし、全部揺らいで、プライベートなことでも揺らいで、どうしたらいいかわからなかったけど、とりあえずカメラを回した」と星良さん。それがあんなに素晴らしい作品になったのですね。

あっという間に、トークも終わりの時間を過ぎています。
星良さんの話、もっと聞かせてもらいたかったです!
大学を卒業したけど、就職できなかった星良さんは、「日本をあまり旅したことがないので、しばらく北陸をバックパッカーでまわる」そうです。次の作品の糸口をきっと見つけてくることでしょう。

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星良さんと福間監督。年齢差は40歳もありますが、自分の表現の自由さと幅を求めてやまない気持ちはとても近いものがあります。これからもお互いを刺激するような挑戦をしていってほしいですね。
福崎星良さん、今日はほんとうにありがとうございました!


福崎星良さんの作品と予告篇は以下から見ることができます。
http://www.facebook.com/l/3AQHRPybiAQEk7oIwcXQJ3tifvQeiwN-6EVAAnivAzapZ-g/https%3A%2F%2Fvimeo.com%2Fuser1964706%2Fvideos

http://www.facebook.com/l/-AQHfjCtHAQHlyi0KNMwWwyQacCFVEV-QCm4UzcGWK0wXUA/www.youtube.com/watch?v=mSaLb4aXHC4


宣伝スタッフ ぶー子
写真撮影   加瀬修一