4月13日土曜日、今日のトークゲストは、お待ちかね「福間映画三銃士」と小原早織さんです。
福間監督の映画では、映画づくりで一番大事な撮影と編集と音が、とりわけ大きなカギをにぎっています。それらを支える三人を称して「福間映画三銃士」と独断で名づけちゃいました。
撮影の鈴木一博さん、編集の秦岳志さん、音響設計の小川武さん。ご三方ともに、映画の世界での活躍ぶりは周知のとおりで、福間監督にとっては大先輩のみなさんです。
「三銃士」のおかげで前作『わたしたちの夏』も『あるいは佐々木ユキ』も生まれたと言っても過言ではありません。
そして、本作主演の小原早織さん。『わたしたちの夏』のサキ役から、彼女もまた「福間映画」を支える大きな存在です。

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さて、今日は名古屋シネマテークでの上映の初日でもあるので、福間監督は名古屋に行っています。監督不在のアップリンクトーク。
ゲストの4人は、それぞれ自己紹介をしてから、「欠席裁判」的に「悪口を言ってもいい」をテーマに(!)、編集の秦さんが司会進行をつとめるかたちでトークは始まりました。
(今日のトークは、福間映画を解く上で貴重な記録となると考えて、トーク内容のほぼすべてを掲載しています。鼎談形式で、すこし長いですが、面白がりながら読んでくださいね。4人のゲストの敬称は略しました)。

 福間映画に関わる

 福間さんの映画は、決してギャラがいいとは言えないわけですが、みなさんそれぞれどういう経緯で関わることになったのでしょうか。小原さんと私は、じつは福間先生の教え子であったということがきっかけでもあるんです。
まず、イッパク(一博)さんは、どうだったんですか。
鈴木 同じ町に住んでて、飲んだときに、ぼくが撮りますって言っちゃった……。
小原 あと何本ぐらい撮る約束なんですか?
鈴木 あと、3本ぐらいかな……。
小原 あれ、7本じゃないんですか?(笑)
 前の作品も観てたんですか。
鈴木 観てましたよ。
 じゃあ、これは行ける、という感じで?
鈴木 いや……まあ、スケジュールも空いてたんで(笑)。
 小川さんは、私が引き込んだということもあるんです。『わたしたちの夏』のときに、音のことで困って、小川さんにお願いしたという経緯です。
小川 ぼくは、福間監督のことは知らなかったんですが、秦さんにやってみないかと言われて……。最初に、渡された素材を見たとき、正直、びっくりしましたね!(苦笑)。先日の山田真歩さんゲストのときに彼女が「全部バラバラだ」と言ったという話を聞いたんですけど、ぼくの最初の印象もそれに近いというか。この映画はどことどこがつながってて、何と何をつなげれば成立するんだろうって……。謎解きというか、自分なりの解釈をして、いまある断片の豊かなイメージを音でつなげていく、ひとつの作品としてまとめていくということを考えた。あの作品では、水というテーマなのかなあとか考えて、音を構成していきました。
 小川さんの提案で、前に進んだことって、じつは多いんですよね。今回の『佐々木ユキ』でもそうですし。ふつう映画は、編集で定尺を出して、音の処理をお願いするかたちで動くんですけど、小川さんにお願いしたら、提案が出て、編集が変わっていくという……。
小川 商業映画と違って、こういう低予算の自主映画の、最もいいところっていうのは、いろいろ話し合いながら、フレキシブルに作品を変えていくことができることなんです。それは、すごくいいことだと思うんですよね。一般の映画は、監督と編集が決めていて、そこから動かすことはほとんどないんですよ。音楽の長さを5秒ぐらい変えるとかしかありえないので……。変えることは、いけないって言われてるんですよね。
 ふだんやってる商業映画のフラストレーションみたいな……。
小川 まあ、やっぱりそれはありますね。
小原 秦さんもありますか?
 私は、ふだんはドキュメンタリーなので、あまりそういうことはないんですが、やはり劇映画とドキュメンタリーとの違いはありますね。ドキュメンタリーって、もともとの時間がつながってるんで、そこのいいとこだけをつまんでいけば、時間がつながってなんとなく映画になっちゃうんです。でも、劇映画だと、カットバックしたりとかがあるので、最初からかなり厳密に時間をつくっていかないといけないというのがよくわかって、いい勉強になりましたね。
小原 たとえばどのシーンが一番気を遣ったとかありますか?
 うーん、たとえば……、前作ですが、サキが千景さんのお店で会うところ、二人の間にある微妙な空気を出したいのに、二人の時間がつながってないし……、あれは1フレームのタイミングで違ったものになるというのはありましたね。初めての劇映画でもあったし……。

 撮影の現場

 ところで、撮影の現場ってどうだったんですか? けっこう自由なんですか?
鈴木 いちおうまあ、台本というかプロットはあるんで、それに沿ってというか……。
小原 わたしの印象としては、いちおうプロットはあるんですけど、カメラのアングルとか決めるのは全部イッパクさんだったという感じがしたですね。
鈴木 いや、そんなことはない……。
小原 そうですか。監督は、立ってて、イッパクさんがカメラをあれこれいろいろ一生懸命やってて、こんな感じなんですけどって言うと、監督はじゃあそれでいこう、みたいなやりとりをいっぱい見たなという記憶があるんですけど(笑)。
鈴木 そうでもない、いちおう事前にこういう感じでいこうって打ち合わせはあるんで……。
 絵コンテとかあるわけじゃないんですか?
鈴木 ないです。だから、芝居とかはこういうところから撮る、とかいうのはあります。

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 芝居の演出はどうなんですか?
小原 わたし的にはあまりないと思ったんですけど……。一番最初に、この映画を始める前に話したときも、あまりお芝居しなくていいよ、普通にしてていいよ、みたいに言われて、じゃあ、そうします、って。
 じゃあ、あまり芝居を撮ってなかったんですね(笑)。
小原 そうなんですよ。
 いやー、そこまでできちゃうとすごいですね!
鈴木 まあプロットとかホンがあるんで、言葉があるし……。福間さんが自分でロケハンとかやってるんで、場所とかは……。
 大きなところは福間監督が決めて、あとは自由にやらされてるようでいて、じつはもしかしたら決められてるのかな(笑)。
鈴木 まあ、そうだと思いますけどね。

 怖がりじゃない

小川 どちらの作品も、画がすごくきれいだっていう感想がたくさんあるでしょ。画は、ほんとにちゃんとした劇映画の画なんだけど、音は学生のスタッフが撮ってるんで、びっくりするような音なんですね、とても使えないんじゃないかと思うような音があるんです。それも含めて今回面白かったのは、使えないものはもうやめようと、シンクロにこだわってそれを使ったり、あるいはアフレコができたとしても、口に合わせて何かを喋ったりしてもらうのはもうやめようと。『佐々木ユキ』で言うと、冒頭の千石先生と話すところ、途中まではなんとか使えたんだけど、後半はぜんぜん使えない音だったんですよね。だから、ふたりはいろんな話をした、だからあとから撮った音を重ねたっていい、と。その方が表現として豊かになるんじゃないかと。そういう自由な発想ができたのは、この作品ならではでしたね。
 小川さんの提案が光った部分だと思うんですけど、それに福間さんもヴィヴィッドに反応して……。
小川 監督が面白い面白いって言ってくれるから、またそれも進むっていう……。監督はそういう意味では、怖がりじゃないので、ちっとも(笑)。

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小原 わたしが言ったことも、面白がって採用してくれたりとか、話を聞いてくれたりして、そういうとこはいつも、いいなあ、面白いなあって思いながらやってましたね。
 ぜんぜん守りに入ったりしない人なんですよね。それがうまく回った、ということなんでしょうね。
小川 さっき秦さんが言ったみたいに、映画というのは時間軸を自分たちでつくっていかなきゃいけない。たとえば『わたしたちの夏』でみんなが集まって宴会してるシーンで、雨が降って中断してた。そしたら、そのときにしてた会話がすごく面白かったんで、それを撮って使っちゃった、っていう……(笑)。ドキュメンタリーだったら成立するんだけど……。で、雨降ってる音がすごいんですよ。これ、どうすりゃいいんだと!(笑)。悩むんですよ、つながりはどうしよう、って。時間経過に使えないことはないから、そこらへんをどう表現しようかとか。そういうところが、劇映画ならではの大変さでしたね。辻褄があわないという……。
 合わないことがいっぱい(笑)。カットバックしたら、記録してる人がいないから、合ってないとか……。

小川 みなさん、なにか聞きたいことがありませんか?
(質問が出ないかなあと思っていたら、出ました。じつはこの質問した女性こそは、ついに来館した「佐々木ゆき」さんでした!)

(ゆきさん) 芝居をしないという指示があったということですが、ほかの人についてはどうだったのでしょうか?
小原 そうですねえ、ユキbにも同じようなことを言ってたと思います。たとえば舞台やってる人とかはやっぱり芝居やりたいと思いますけど、そういうのは合わないし、監督が好きじゃないので、わたしやユキbには言ってましたね。でも、千春さんは、かっちり作って、監督に積極的にいろいろ質問したり、千春という人の過去の話とかもしたりしてたんで、会話があったんだと思うんですけど。
 相手によって分けてるんですね。
小原 そう、それはありますね。
(ゆきさん) そのことをすこしだけ感じたところがあったので、納得しました。
小原 さっきも話に出ましたが、カットのあとのところを使ってたりとか、休憩のときのものを使ってたりするので、どれがほんとでどれが芝居なのかみたいな感想を言う人、けっこう多いです。
(ゆきさん) そこが面白かったです。

 もっと自由に

 イッパクさん、この映画を編集してるときに、これは映画になってるのかなあってしきりに言ってましたけど、出来上がってここまで上映してきて、わりと好評なんですが、完成してみてどうですか?
鈴木 うーん、『わたしたちの夏』のときに面白かったのは、写真を使ってやるということで、映像と写真の組み合わせを意図的にやることが、決まってたのかなあと思いますけど……。
 今回、三脚をずっと使ってますよね。
鈴木 映画になってるのかっていうと、まあ、なってるんじゃないかと思いますけど……(笑)。
 撮り終わった時点で不安があったみたいなことだったのかなと……。
鈴木 いや、それはないです、ええ、はい……。
 私は台本を読んだ時点で、これはほんとに詩の映画なんだな、福間健二そのものの映画なんだなと思って、編集ではあまり変なことはしない方がいいだろうと思って、ほぼそのまま編集した感じなんですけどね。それで、ユキの生きてる魅力が出てるから十分かなと思ってたんですけど、そのへん不安に思っておられたのかなと。
鈴木 いや、入る前に最初に、こういう方向でということを話してたんで、そのまま……。
 あ、よかったです!

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 小川さんの提案を消化していったりとかもあって、そういう意味では、イッパクさん、小川さんの力が大きくて……私はあまりないんですけど……。
小原 そんなことないです。なんかエセCGやってましたよね。ほんとのCGが何かわからないですけど、ユキbが歩道橋でふっと消えていくところ。
 あれは、最終段階で、カラコレやってるときに、その場で面白い面白いって言って、やっちゃったんです! でもちゃんと効果あるかなと思ってはいますけど。その場その場で提案を出してつくるのがいいかと。
鈴木 そうそう。でも、そんなに自由につくってるわけじゃなくて、ある程度決まりごとの中でつくってて、本格的にもっと自由ってわけじゃない気もして……はい(笑)。
 画は、かっちり撮ってて……。
鈴木 まあ、そのへんがもう少し違う撮り方もあるかもしれないとは思いますけど。
 じゃあ、次回作で。あと3作、約束が残っているんで。飲む席なんかで、福間さんは次回作のことをいっぱい話すんですけど、次はこういう撮り方でいこうとか?
鈴木 え、そうなんですか?
小原 ええ、ええ、聞きました。
鈴木 ぼくは直前じゃないとそういうことは言えないような人なんで、適当に聞きますけど(笑)。
 
 福間さんは大学の仕事が終わって、これからバリバリと撮影をして、という話なんですよね。
小川 恐ろしいことですね!(爆笑)
 『佐々木ユキ』のような作品が、またまったく違う映画として登場してくるんだと思うんですけど。
小川 一般の映画は、僕たちの意図のようなものがあって、それを観客にわかってもらえるかなってことが一番心配なんだけど、この映画は、ぼくたちが思いもしなかった観客の反応とか感想があるのがものすごく新鮮ですね! こっちの意図をわーっと押しつけるようなところがないっていうか、そういうところも、新鮮な映画なんだなあって、ぼくは思ってます。
 福間さんの映画の魅力は、そういうところにあるのかなあって思ってます。
うまくまとまったかしら(笑)。


じつに素晴らしいトークでしたね。福間監督が裏でこっそり聞いてたら、きっと涙ぐんだんじゃないでしょうか。
鈴木一博さん、秦岳志さん、小川武さん、そして小原早織さん、ほんとうにありがとうございました。これからもよろしくお願いします。
福間監督の「もっと自由な」次作にどうぞご期待ください!


宣伝スタッフ ぶー子