4月13日(土)は、監督の福間健二さんが舞台挨拶されました。
劇場はほとんど満席の状態。当日の司会、名古屋シネマテークの平野さんに促され、福間監督は終始率直、かつにこやかなもの言いで、映画の始まる前と終わってからの2度挨拶にたち、客席からの質問・感想にも長い時間をとって丁寧にコメントされていました。

まず、この映画の成り立ちには「とにかく佐々木ユキ役の小原早織さんの存在が大きい」と福間監督。そして、「タイトルにある佐々木ユキという名前は、ほかの名前であってもいいわけです。20歳くらいの年代の若い女性の一人の名前の象徴ですから」。
その若い女性が親から離れ、大人になっていく過程があるとすれば、大人になる前までの姿、「妖精時代」と言ってもいいかもしれませんが、そこまでをいくつか重なり合うような映像で描ければよかった、ということを監督のコメントから理解しました。そして、そのために「ユキ」はひたすら映画の中で見つめられなければなりません。
「ただ、知らない人が女性にでも子どもに対してでもですが、近年相手をじっと見つめることが、街の中でできなくなりました。また、そういうムードが覆っています。でも映画の中では、誰でも主人公のことをじっと見つめることができますよね」。
福間監督の実直な言葉が響きます。

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そして、まじまじと20歳である主人公の魅力を凝視するようにして完成させたのが今作。20歳の女性の妖精時代の終点間際と、それに接続する種々の世界(たとえば文月悠光さんの詩世界や千春さんという大人世界)を短冊のように織り込んでみせた自信作であると思われます。

配役にもどると、小原早織さんは福間監督の前作『わたしたちの夏』にも出演され、そのときの好演・印象が大きかった様子で今作では主演に抜擢されています。ただ、小原さんは監督が教える大学に在学中で、「2011年1月中頃からはフランスに留学することになっていました。撮影は1月の留学直前までとなりますから、そこから換算していって撮影期間は全部でおよそ6日間。正確には5日と半日ですが、その時間内に、すべての撮影を終了させることになりました」。
ちなみに『岡山の娘』は1か月近く、『わたしたちの夏』は2週間くらいで撮影したとのことでした。福間監督としては「これまでの中、最速で撮った映画」であり、「短い期間で映画を撮ってみたいと思っていた」ことも述懐。監督にとって「最速撮影」の意味にはたぶん、製作コストが圧縮されることも含まれています。

客席からの感想では、「これまで福間監督の作品をみた中で一番安定感がありました。安定感の意味は、これが自分の映画(福間映画)だという実感ができたからと思えます」に対して、「この映画に安定感があるとすれば、撮影を担当した鈴木一博さんはじめ編集、音響ほかそれぞれの担当の方の成果がとても大きかったと思います」と返す監督。

また、たまたま手にした案内チラシをたよりに初めて劇場に足を運んだという方の質問は、「福間さんが詩人だということを映画案内に書いてあってそれを初めて知りましたが、この映画を詩としてみるのがいいのか、それとも映画としてみるのがいいのか。福間さんの映画の見方を知りたい」。
これに対しては、詩には文字があって作られ、映画には映像と音があって作られと表現の形に違いが出てきますが、「自分としては映画も詩を書いている人間としての作品だと思っています」と監督。詩人としての映画表現であることを告げています。

ほかでは、「映画の中に入りづらかった」という声もありました。一方、「わかりやすかった」と上映後に語る方も。
「ある時期ゴダールにとって女優アンナ・カリーナが美の女神だったように、福間監督にとって小原さんは、ミューズとの出会いだったかもしれませんね」とは、質問・感想には名乗りをあげませんでしたが、当日の客席にいた方のコメントです。フランスで撮影した女性のポートレートが縁で、日本の雑誌で写真を撮るようになったカメラマンさん(日本人)だそうです。
ほか、客席には詩人の瀬尾育生さんなどの姿もありました。

上映イベント後、監督にサインを求めたり感想を伝える列のかたまりができて、寡黙な雰囲気ではありますが、全体に静かな熱気が感じられる会場でした。


レポート ういろうエイト
写真撮影 永吉直之