「爆弾低気圧」にたたられた初日でしたが、翌7日(日)は、風は強かったものの、よく晴れました。今夜のトークゲストは古澤健監督。
『今日、恋をはじめます』の大ヒット作に続く次回作を準備中の、お忙しいなかをいらしてくださいました。古澤監督お目当てのお客様もきっといらしたことでしょう。
上映が終わって、古澤監督と福間監督が登場するやいなや、場内の空気がゆるんだように見えたのは、古澤監督のかもしだす、どこか「コミカルで庶民的な」印象のせいでしょうか。

トークは、古澤監督の持参された『急にたどりついてしまう』のビデオから始まりました。
「2年前に亡くなった親父の遺品の整理を、今ごろやってたら、福間さんの第一作のビデオが出てきたんですよ」と古澤監督。
『急にたどりついてしまう』(95年)では、古澤監督のお父様であるドラマーの古澤良治郎さんが参加していたdè-ga-showの音楽を使わせてもらったので、福間監督が古澤良治郎さんにビデオを渡していたという経緯です。遺品というものは、そういうかたちで自分の元に戻ってきて、また新たな縁を結ぶことがあるものですね。
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「『わたしたちの夏』のトークのときにも話したのですが、福間さんの感じが父に似てるなあといつも思ってるんですよ。僕は監督になって、映画に撮りたいと思った人が二人いるんですね。ひとりはベーシストの川端民生さん、でももう亡くなってしまった。で、もうひとりなんですが、父が昼間から酔っぱらって街をふらふらしながら歩いてるのを見たとき、ああ父を撮りたいと思ったんです。でもその父も死んでしまった。で、父に似ている福間さん、福間さんの話し方を聞いていると、ああ、撮りたいなあって思ってるんですよ」と古澤監督、いきなり驚くような発言!
「どこか『はずれてる』古澤良治郎さんと似てると言われるとうれしい」と福間監督は、すこし照れています。
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「父はライヴの前にも酒を飲むんで、ライヴの最中に寝ちゃうことがあるんですよ。あれ、ドラムの音が消えた……すると父が寝ている(場内笑)。変な言い方かもしれませんが、福間さんの映画にもそういう感じがある。『わたしたちの夏』を見たとき、福間さんのよそ見をしている感じがいいなあと思ったんです。
僕の作っている映画は商業映画で、客の嗜好や視線を意識して作りますよね。福間さんは、自分の視線というか、これを撮ってるのに、こっちも撮りたくなったから撮ったというのが見えてますよね。
たとえば、カルタのシーン。あれって、何も決めずにやって、ほんとにカルタやってる。見えないものが、よそ見して見えてくるという面白さですよね」
うーん、古澤監督、鋭い指摘ですよね!
「あのシーンは、ほんとうはユキbに勝ってほしかったんだけど、ユキaが負けない。もしかしたらスタッフもどこでカットがかかるかわかってなかった。なにか決められたことに反発しちゃうんですよね」と福間監督。
「商業映画も、やはり同じこと考えてるんです。『映画じゃないもの』をやりたいというか。人間の側のルールを機械のカメラに押しつけても面白くないよなあって……」

さてさて、二人の監督の話はどんどん盛り上がっていきます。
古澤監督の名言「福間さんはよそ見をする人」は、よく言われる「福間監督の映画はわかりにくい」を解くカギにもなるように思えますね。
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そして話は、古澤監督の、壮大な夢の映画構想に展開していきます。
「中島敦の本に『名人伝』というのがあって、弓矢射ちの話なんです。弓の修業をして達人となった男が、山頂に住む仙人のような大家のところに行き、さらなる修業をする。しかし、男は大家に、おまえの弓は〈射の射〉というもので〈不射の射〉ではない、と言われる。〈射〉というものはこういうものだ、と大家が見せたのは、実物の弓を持たず、弓をかまえる姿勢と目で空を飛ぶ鳥を射落としたことだった。
で、福間さんにやってもらいたいのは、カメラを持たずに映画を撮る監督の役なんです!」(場内爆笑!)。

これを考える元になったのは、古澤監督の「福間さんは、顔の感じやしゃべり方が父に似ている」ところからきているそうです。
ひとつは、お父さんが50歳を過ぎたころに「最近やっとタイコの叩き方がわかった」と言ったこと。
もうひとつは、お父さんが晩年になって手が動かなくなってきて、もうやめたいと言っているころに聞いたライヴがすごかった、これこそが音楽だなと思ったこと。
「で、福間さんは、撮影と編集と音とに助けられて『何もしてない』ように見える。何もしてなくて映画撮れれば、もうそれは『神の手』だなあと。こういう映画が撮れたらなあと思ってるんです」と古澤監督。
客席はもう大よろこびで、笑いが絶えません。
「あの『making of LOVE』、古澤監督自身がヌードで出てるんですが、やはりその監督の発想だよなあ」と福間監督。そして「じつは僕、家でDVD見ながら、セリフ言ったりしてるんですよ」(笑)。
すかさず古澤監督「そのシーン撮らせてくださいよ!」(笑)。

肝心の「アイドル・コミック・ファンタジー」への展開は時間切れとなり、今夜のトークは、福間健二主演、古澤健監督作品「神の手」で夢をつなぐことと相成りました!
みなさん、どうぞ長生きして、ご期待ください!
古澤監督、どうもありがとうございました!
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宣伝スタッフ ぶー子
写真撮影   加瀬修一