——批判/応答、そして対話

今夜のゲストは、映画監督の山戸結希さん。山戸監督は現在、上智大学の4年生で、昨年発表された『あの娘が海辺で踊ってる』が高い評価を受けています。
福間監督は、「キネマ旬報」に山戸さんが寄稿した『あるいは佐々木ユキ』の批評に感銘し、また山戸監督の作品からも強くインスパイアされていたところ、ついに今夜二人の対談が実現しました。福間監督が、山戸監督の批評に惹かれたのは、それが単なる賛辞や非難としてではなく、率直にして聡明な直観につらぬかれた確かな批判として書かれていたからです。福間監督は「こういう批評に出会うために今まで映画を撮ってきたんです」と言い切ります。すると山戸監督は監督と映画を見終わったばかりの観客の目の前で、物柔らかな口ぶりながらきっぱりと、『あるいは佐々木ユキ』を改めて批評しました。
 
「わたしはこの映画に違和感を感じたんです。これは映画ではなく詩だなと。それは詩が出てくる映画という意味ではないです。ここでは言葉の永遠性に、現実の時間や演じている人々の実際が飲み込まれてしまっている。スクリーンから奥は断絶されていて、これから10年経ったとしても、そこは無時間の世界なんじゃないかと思うんです。つまり、それがわたしにとっては『詩』だということなんです。永遠性を孕んで留めておくもの、それって言葉だな、と。だからわたしは『あるいは佐々木ユキ』にそれほどの炸裂をみませんでした」。

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福間監督は、「僕は映画を撮るように詩を書いてきて、詩を書くように映画を撮っているつもりだけど、詩のような映画を撮ろうとか、そういう難しいことは実はあんまり考えていない。ただ、前の2作がメロドラマ的な物語をいかに非メロドラマ的に描くかということに挑戦していたのに対して、今回の作品にはメロドラマ的な要素というものがないんです。ユキにはとりたてて困ったことなんかない。それでも一本の映画になるということなんだよね」と答えます。
これに対して山戸監督はさらに「わたしにとっては、メロドラマというのは地獄の話のことなんです。つまり個人の中にある地獄をどう描くかということですね。『わたしたちの夏』はそうなんですけど、『あるいは佐々木ユキ』というのは天国の映画なんです。ある永遠性をもっている。それが言葉の世界だという気がするんです」。
福間監督は、「うーん」と少し考え込んでしまいました。

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その後も山戸監督は鋭い質問を繰り返しますが、福間監督を最も戸惑わせたのは、「これまで詩作をされてきて言葉の世界にいらしたのに、なぜ映画を撮っているのですか」という質問でした。
「山戸監督にだけはそういうことは言われないと思ってたのに……」と少しショック気味の福間監督は、「僕は詩のような小説があったり、詩のような演劇があったり、詩のような映画があっていいと思うんです。もっと多様でいいって考えです。僕にとっては、カメラがありさえすれば、そこに映されたものはすべて映画なんです。だって本当はそれだけの意味なんですよ、”Moving Picture”っていうのは」と答えます。
山戸監督は、若者の特権ともいうべき純粋さとかたくなさで「でも『映画とは何か』ということを考えませんか?」と福間監督にせまります。福間監督は、「それはもちろん考えずにはいられないんだけど……」。

こうして今夜のトークショーはさながら、「永遠の映画小僧」と「恐るべきこども」の対決の様相を呈していきました。しかし、会場の観客のみなさんはこの白熱する議論をあたたかく最後までみまもって下さいました。

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山戸結希監督――若年にしてこの炯眼は、頼もしいというべきか、末恐ろしいというべきか。いずれにしても映画の作り手としてだけでなく、良き批判者としても今後のさらなる飛躍を切に願います。

山戸監督の話題作『あの娘が海辺で踊ってる』は、2月16日(土)から21日(木)まで、他2作(『Her Res〜出会いをめぐる三分の試問3本立て』と『映画バンもん!〜あなたの瞬きはパヒパヒの彼方へ〜』)と併せて、オーディトリウム渋谷で連日21:10からレイトショー公開されます。詳しくは、劇場HP(http://a-shibuya.jp/archives/4822)まで。この機会に是非、足をお運びください。

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レポート:河野まりえ
撮影:加瀬修一


『あるいは佐々木ユキ』の上映は2月1日(金)までです。
追加のイベントも2回あります。

1月27日(日)21時の回は、福間監督の朗読が映画へと誘います。1回限りのスペシャルイベント。監督自身の声と言葉から入っていく『あるいは佐々木ユキ』。またちがう表情がきっと見えてくるはず。ぜひとも立ち会ってください!
そして1月29日(火)21時の回上映後は、主演の小原早織さんと福間監督のトークです。とんでもない撮影エピソードが出てくること必至。のがせませんね!
みなさん、どうぞポレポレ東中野にいらしてください。