1月20日(日)、今夜のトークゲストは詩人の文月悠光(ふづき・ゆみ)さん。『あるいは佐々木ユキ』に、本人自身の役で出演してくださっています。
このトーク、ほんとうは14日の成人の日を予定していたのですが、あの大雪で急きょ今日に延期。ちょっと心配していましたが、変更の情報もしっかり伝わったようで、日曜日の夜にもかかわらず、文月さんのファンをはじめたくさんのお客様がいらしてくださいました。

文月さんはいま21歳。子どものころから詩人になることを志し、中学時代から詩作と朗読活動をつづけてきました。高校3年生の2009年に出版した第一詩集『適切な世界の適切ならざる私』が、中原中也賞と丸山豊記念現代詩賞を最年少で受賞して大きな注目をあび、都内の大学在学中のいまも、執筆と朗読活動に大活躍しています。

トークショー文月悠光-1

上映の余韻を残した、まだほの暗い壇上に文月さんが登場。劇中、冬の光をあびた公園で、聴衆を前に朗読したあの「横断歩道」の朗読です。劇中のそれとは、声も語り方も姿もずいぶんちがうように感じます。撮影から2年、それは、少女から大人になっていく文月さんの時間だったのでしょうか。
「保険おりるな。/だから/おりてこいよ、ことば。」
耳を澄ませて聴き入った場内に大拍手が起きて、福間監督が登場しました。

福間監督「すごくよかったね。半分は昔をなぞっているようでもあるけど、ずいぶん読み方が違う。声が変わったのかな」。
文月さん「撮影のときは風邪をひいていたので、声が出るかどうか心配でした」。
文月さんはこの映画を試写で一度見ていますが、劇場では初めて。福間監督がその印象をたずねました。
「撮影のとき、台本を渡されていたけれど、どんな映画なのかちっともわからなかった。試写で見せられて、自分が冒頭に登場していて、びっくりした」と文月さん。そして「そもそも、なんでわたしを出そうと思ったんですか?」と質問。
「2010年秋に、僕の詩のワークショップにゲストで来てもらったよね。正直に言うと、それまでは『天才少女』のイメージでいたんだけど、実際の文月さんは、はっきりくっきり出ているものがある人で、映画に出てもらいたいと思った。『小原早織+文月悠光』の映画というイメージがわいた」という福間監督です。

その後、撮影までの短い間にメールでのやりとりがあったのですが、「人魚ひめ」についての経緯を、ふたりは思い出しながら話します。
おとぎ話で好きなのはと問われて、「人魚ひめ」と答えたけれども、台本にあった「妖精だったら、水の精がいい」のセリフに結びつけて答えたわけではないんです、と文月さん。それに対して福間監督は、もともと出てきていた「人魚ひめ」のモチーフが文月さんとつながったので、それでいこうと決めた、と。
つまり、文月さんが「人魚ひめ」について語るところはドキュメンタリーで、ユキと話す「水の精」のところは、芝居をしているということなのです。
「こんなにやらされるのかって思った?」と福間監督。
「全体像が見えていなかったから、こんなものなのかなと。人のセリフの中に、詩がポンと出てくるなんて、不思議な映画です」

トークショー文月悠光-3

「横断歩道」を朗読してもらうことに決まったのは、文月さんの出演が決まって、主役の小原早織さんに『適切な世界の適切ならざる私』を読んでもらったら、「横断歩道」が一番好きだったことからきています。このことを福間監督は今日のツイートでつぶやいたのですが、それを読んで文月さんはとてもうれしかったそうです。

福間監督は、撮影から映画の公開までの2年の間に成人式を迎えた文月さんに、20歳の女の子って、どうなんだろうと尋ねます。
「人それぞれだけども、20歳から21歳よりも、19歳から20歳へは、ひとつ壁を越えるという感覚かな。十代最後の日に何をやるか、なんて友だちとドラマチックなことを考えたけど、実際は淡々とすごした」と文月さん。
それを聞いて福間監督は「文月さんの中にくっきりとある、人とちがう自分、人と同じ自分。それをインタヴューに撮ろうと思ったのを思い出した」。
「自分のなかでは、短いスパンの自分の持続というか、いくつかの点と壁を越えて、乗ってる電車は同じかもしれないけれど、通り抜けてきた先にいつかは大きな乗り換えがあるかもしれない。どこかで窓を開いて飛び降りるかな」と文月さん。さらにつづけて「この映画を見て、同世代の女の子より、なんかなつかしい感じを持った。まわりはみんな淡々としているけど、この映画は揺らぎがくっきり出ていて、ユキは自分探しをしている印象です」と。

さて時間も残り少なくなって、話題は「原稿用詩タイツ」です!
タイツブランドtokone から発売されている、文月さんの詩の言葉が原稿用紙のマス目に入った模様のタイツ! もちろん今夜の文月さん、身につけての登壇です。
「詩集は、詩がパッケージされているけど、タイツだと外にむかって足に乗っかっているから、詩をそれくらいの感じで読んでもらっていいのではと……」。
壇上だと見えませんが、あとでロビーでしっかり見せていただきました!

トークショー文月悠光-6

締めくくりに文月さんは言いました。「映画のなかのユキは、どれがユキでもいい。観る人がユキのみに感情移入するのではなく、それぞれのなかにユキがいる、そう思います」。
そして福間監督は、「今日の文月さんを見ていて、映画の文月さん、それは残ると思った。19歳の文月さんを撮りました。僕としては「やった!」という気持ちです」。

『あるいは佐々木ユキ』は2月1日まで上映が続きます。ゲストトークもまだまだあります。一度観た方も、まだ観ていない方も、どうぞ「ユキ」の中の自分に出会いにポレポレに足をお運びください。

トークショー文月悠光-8



宣伝スタッフ:ぶー子
写真撮影:松島史秋