あるいは佐々木ユキ 公式blog

A Fairy Tale
福間健二監督作品  2013年/HD/カラー/79分

2013年09月

9月22日・23日の連休、福間監督には深い縁のある鹿児島で、昨年の『わたしたちの夏』につづいて、『あるいは佐々木ユキ』がガーデンズシネマで上映されました。

桜島は、8月後半の大噴火の後も毎日モクモクと噴煙を吐いています。空港から市内へ向かうバスの中、まるで入道雲のような噴煙を見ながら、鹿児島の人々の暮らしはこの「生きている」桜島ぬきにはあり得ないのだとあらためて感じます。降り積もる灰を掃き集めることから毎日が始まるのでしょう。道路も舗道も、きれいにされていて灰はうっすらです。鹿児島の人々には、雄大な桜島を誇りに思う一方で、たいへんな生活があるのですね。

1

さて22日(日)、福間監督は1回目の上映が終わるころ午後4時30分に、天文館マルヤガーデンズ7Fにあるガーデンズシネマに到着。すっかりお馴染みになった支配人の黒岩さんとスタッフの鮎川さんが笑顔で迎えてくださいました。「大勢の方がみえてますよ」の黒岩さんの言葉に、福間監督の緊張はほぐれて、笑顔で挨拶に登壇しました。

1

「去年の『わたしたちの夏』につづいて、ぼくの大好きな鹿児島で新作『あるいは佐々木ユキ』を上映してもらえることを、ほんとうにうれしく思います。この映画は、主役に決めていた小原早織さんが2011年3月からフランスに留学することになったので、その年の新年早々に撮影しました。それも、小原さんの事実を逆に使って主人公はフランスから帰ってきた女の子に設定しました。1月は1週間ほどで撮影終了して、3月4日に風景の追加撮影をしてすべてを終了したのですが、その1週間後に3.11が起きたわけです。編集作業に入ったのはずいぶん経ってからだったんですが、やはり世間も自分も3.11前とは意識がちがってきている。2012年の夏に編集を終えるまで、そのことを感じながらやりましたね。
これまでの上映で同じことを何度も話してきているので、鹿児島ではみなさんからの質問があればお聞きしたいです」。
福間監督は初めにそう話しました。

1

支配人の黒岩さんからタイトルについての質問が出たあと、客席から手が挙がりました。男性の方です。
「詩を通した世界観はちょっと難しかったですが、単純にビジュアル的なところで、モノレールからの景色と町の風景、そしてキラキラ輝く夜の風景、そのなかで物語が進行していくのがとても心地よかったです」。
「ぼくは乗り物の中から撮ることを前の作品でもやっていますが、これはカメラマンの鈴木一博さんが撮ればこそなんですね。位置を決めてそこで鈴木カメラマンがかまえれば、もう言うことなしの画が生まれるんです」とうれしそうな福間監督。

つづいて女性の方から「出演しているのはみんな俳優さんですか?」の質問。
「小原さんが元々は俳優をめざしていたこと、千春さん役であり『わたしたちの夏』主演の吉野晶さんは女優であること、この二人以外はみんな素人。でもそれぞれに自分の表現を持っている人たちがほとんどなので、現実の自分を出しながら個性を持った存在として演じてくれたと思います」と福間監督。

ここで、思いがけない人の登場です!
『あるいは佐々木ユキ』のスタッフとして活躍してくれた、当時首都大の大学院生だった坂元小夜さんです。いま彼女は福岡に住んでいて、今日の上映に鹿児島まで来てくれたのです。
「映画の現場は初めてだったんですが、1月の寒い時期で、朝から晩までで、待ち時間が長いのに驚きました。本番中は、お腹が鳴らないようにと気にしてました」と坂元さん。
福間監督はすかさず「うちの現場は一日の撮影時間も短い方だし、待ち時間も短いんだよ」。「えーー、そうなんですか!?」と坂元さん。
確かに福間組は、朝の集合時間も特に早いわけではないし、待ち時間も短い方だけど、ほとんどの撮影を寒い寒い1月の6日間で撮ってるわけだから、初めての人にはきびしかったですよね。

1

「『ユキ』は、詩を書くことと映画をつくることがひとつになれたかなあ、ある意味での到達点に来たかなあと思ってます。それがいいことがどうかはわからないけれど、次は少しちがうものをめざします」と福間監督は最後に言って、鹿児島第1回目の上映後トークを終えました。

ロビーと通路には、17時40分からの次の回に来てくださったお客様がすでに並んでおられます。旧知の友人の顔もあります。うれしいことです!
2回目、福間監督は上映前の挨拶を簡単にして「朗読から上映へ」を行ないました。鹿児島までの各地での上映で行なってきた「声から映像へ。耳から目へ。」です。ここガーデンズシネマでは、劇中で良平さんを演じた萩原亮介さんが朗読している「天使をすてる2011」と、キャッチコピー「もうすこし歩いてもうすこしへんになってみる」の「もうすこし」の2編を読んでから上映に入りました。

ところで、ガーデンズシネマでは昨年8月からデジタルシネマ化をめざして募金活動を行なってきて、その募金と借入金で導入を実現し、この9月7日から新しいデジタル上映を開始したところです。そのニュースを知っていたtough mamaプロデューサーは、2回目の上映を鑑賞しました。冒頭からおどろきました。光と影のバランスのとれた画の美しさと、硬すぎず柔らかすぎずの音の心地よさには、唸るほどにびっくり! こんなにもちがうものかと感心しました。画と音のすばらしさをよく言われる『ユキ』ですが、DCP導入直後のガーデンズシネマで見ることの出来た鹿児島の人たちは、絶対幸運だったと思います。そして、そのとおりの感想をたくさんいただいたのも、事実です。


23日(月・祝)の、3回目で最後の上映は18時半からなので、福間監督は昼間しっかり遊びました。と言っても食いしんぼなので、食べることと温泉に入ることが鹿児島でのいつもの過ごし方ですね!
今夜の交流会をしてくれる「吉次郎」店主とバイトの茜ちゃんと一緒に、おいどん市場に買い出しの後、「ふくまん」のラーメンに大感激! それから「いづみ」のコーヒーを堪能。いったんホテルに戻ってから近くの銭湯(鹿児島の銭湯はすべて温泉です!)「霧島温泉」で汗を流す。これ、最高の鹿児島の一日です。

連休最後の日の夜にもかかわらず、3回目の上映にもたくさんの方が来てくださいました。そして上映後の質問・感想は活発でした。

まず手が挙がったのは、映画をよく見ている男性。
「『急にたどりついてしまう』は映像が粗くて苦手だったけど、『ユキ』はすばらしかったです! 日本のゴダールかと思いました。最近見た映画では『トゥーザワンダー』以来すばらしかった。映像がすばらしい。ライティングはしてるのですか?」と。
「してません。映るままでいこうと決めて、カメラの鈴木一博さんにまかせてるんです。『急たど』のときは、なにか大変なことをした方がいいものができるんじゃないかと思うところがあったけど、いまはできるだけ簡単にやることでいいものができるんだと思えるようになった」と福間監督。

それからやはり、映画をよく見ていると思われる女性からの質問です。
「この映画唯一のエロティックなシーンが、Kが登場して足を洗うところだと思いますが、このKはユキの父か兄の象徴ですか? もうひとつ、ウェールズのスプーンのところ、さすが福間監督、ウェールズが登場した! と思いましたが、ユキがお金ではなくこの魔法のスプーンを選ぶのは?」。
いやー、みなさん、ちゃんと見てますねえ。
福間監督は答えます。
「エロティックな場面を考えたとき、シャワーを使う、これで人を惹きつけることができるんじゃないかと思ったんです。現実の存在ではないものは、夢として受け入れることができるとも。Kはどこから出てくるか、この場所のロケハンはしまくりましたね。あまりに暗くてもホラーみたいになるので、実際に使ったあのマンホールのような場所なら現実から遠くもないのではないかと。
スプーンは、『ユキ』がおとぎ話でもあるということから、また身近にあったものでもあることから使った。で、おとぎ話から学ぶことは、大きいものを選ぶと(欲ばると)不幸になる、小さいもの(一番得しないもの)を選ぶと幸せになるということで、ユキに一番小さなスプーンを選ばせた」と福間監督です。

1

さらに別な男性から鋭い指摘が出ます。
「Kとユキbは足に同じアザ?を持ってますが、この二人の関連性は? それとカルタのシーン、すばらしかったですが、これはホンがあってそのとおりなのか、素のままなのでしょうか」。
「Kとユキbは、ユキの夢の中の存在ともいえるんですね。どこの誰でもない。そういう存在としての共通のマークなんです。あれはぼくが描いたんですが、カメラの一博さんに「林」に見えないかなんて言われましたね(笑)。
カルタについては、同じことをよく聞かれてきました。あれは、ちょっとやってみようかと、カメラを回しながら二人に始めてもらったんですね。見てると、これは2度やれるものではないことがわかってきたし、二人ともノってきたんでそのまま続けてもらったんです。だからこれを本番だと意識していたのはぼくと一博さんだけで、ほかのスタッフはみんなテストだと思ってたはずです」と福間監督。
黒岩さんもすかさず言います。「演技は、結局テストであっても、最初のテイクが一番だってよく言われますよね」。
「ぼくはNGもキープするんです。イーストウッドはファーストテイクのみ。だから速いんですよね。ぼくも速いんだけどね(笑)」。

さて、時間もなくなってきて、黒岩さんから次作について尋ねられた監督は答えます。
「詩がじゃましているものがあるとすれば、詩から離れて、詩を隠して撮っていきたいと考えています。来年はぜひ撮りたいです。そしてまた鹿児島のみなさんに見てもらいたいです」と監督は結びました。

このあとの交流会で、居酒屋「吉次郎」に集った人は約20人。映画好きの人も、『わたしたちの夏』を見てくれて福間映画のファンになってくれた人も、詩人も、呑んべのおじさんも、みんなそれぞれに「『ユキ』はすばらしかった!」と声にしてくれて、福間監督の幸せはこの上ないものでした。
理由はその幸福からだけではなく、鹿児島「吉次郎」での恒例でもある福間「舞踏」が夜半に登場! おなかをかかえての大爆笑の店内をもっと驚かせたのは、つづいて披露された黒岩支配人のダンス! 文句なしに黒岩さんの大勝ちでしたね。
最高の夜でした。
だから、鹿児島に来ずにはいられません! 大好きです!

1

ガーデンズシネマのみなさん、ほんとうにお世話になりました。
詩人協会に呼びかけてくださった高岡さん、山下さん、そして吉次郎と茜ちゃん、そして『ユキ』を見てくださったすべての方々に感謝します。
ほんとうにありがとうございました。


宣伝スタッフ:ヘチマ娘




今回の横浜での上映は、初日から台風接近〜上陸となり、あいにく天候には恵まれませんでしたが、20日の最終日を無事に終えることができました。
どこの劇場でも最終日は決まって、開映寸前に駆けつける人がいるものですが、昨夜のジャック&ベティでも、3人ほどの方が息を切らして来てくださいました。ありがたいなあと思います。

20時25分きっかりに、支配人の梶原さんの呼び出しで登場した福間監督。一緒に挨拶に立つ予定だった主演の小原早織さんが、どうしても仕事から抜けられず来られなかったこともあってか、今夜の福間監督は気合いが入ってます!

『あるいは佐々木ユキ』は、2011年の3月4日に最後の撮影を終えて、その1週間後に起きた3.11の後しばらく経ってから編集に入りました。その作業は、やはりどこかでこの「事件」を意識させられながらだったと思う。映画の最後のところの、モノレールからの空と山の景色。この空は3.11以後につながっていくものだ、それを予感させるようにこの映画を終えることができたと思う。
福間監督はまずそう話しました。

1

そして、2008年の『岡山の娘』、2011年の『わたしたちの夏』、今年の『あるいは佐々木ユキ』と立て続けに撮ったわけですが、それぞれに、映画のなかに詩をとりこむことを意識的にやってきた。うまくいってるかどうかは別として、自分ではやりきったかなと思うところもある。
いちおう「詩と映画」はこのへんで卒業して、今後はちがった展開を考えていこうと思っています。どんなものになるか自分でもまだわからないけど、ここまでで得たものが生きるような、また自分の個性が出せるような、そんな作品をつくっていきたいです。

福間監督にしてはめずらしい、たった5分の舞台挨拶。『ユキ』のポイントと次作への意欲を簡潔に語って、壇上を去りました。
1月に公開してから、9か月近くを経た『あるいは佐々木ユキ』は、ひとり歩きしはじめて、監督になにかを教えてくれているのでしょうか。
福間監督の頭のなかに、きっともう生まれているはずの新作のイメージ。ちょっとのぞいてみたいですね!
『岡山の娘』以来、ジャック&ベティにはいつもお世話になってきました。これからもどうかよろしくお願いします。

いらしてくださった皆さん、ジャック&ベティ支配人の梶原さん、副支配人の小林さん、そしていつも笑顔で迎えてくれるスタッフの皆さん、ほんとうにありがとうございました!

1


宣伝スタッフ 若葉メリー





9月14日(土)、『あるいは佐々木ユキ』は横浜のシネマ・ジャック&ベティでの初日を迎えました。関東では、5月のシネマテークたかさき以来、約四か月ぶりの上映です。冬の映画『あるいは佐々木ユキ』が、暑い夏をこえて、どんなふうに観客のみなさんに受けとめてもらえるか、興味津々です。
ジャック&ベティでは、『岡山の娘』と『わたしたちの夏』も上映してもらいました。
もともと、横浜は福間健二監督のお気に入りの場所。とくにジャック&ベティのある若葉町・黄金町界隈の、なつかしく、ちょっと寂れて、ちょっと危ないような雰囲気に、とても惹かれているようです。

まず、10時30分からの回。
上映後、副支配人の小林良夫さんの紹介で、福間監督とユキbを演じた川野真樹子さんが舞台挨拶に登場しました。

1

「みなさん、朝はやくから駆けつけていただき、ありがとうございました。『あるいは佐々木ユキ』は、2011年の冬に撮影しました。最後のモノレールの景色を撮ったのが3月4日。その一週間後に3・11がおこるわけですが、あのモノレールが進んでいく先に3・11以後の日本がある。そんなふうに作ったつもりです」と福間監督。
そしてこんなふうに続けました。
「映画は、フィクションで作っていることとは別に、そのときの風景を記録しています。あとで行ってみるとなくなっているものがちゃんと写っている。ある意味では、人もそうですね。川野さん、映画のなかの自分を見てどう感じますか?」
「まだ子どもだったかな、という感じです。『わたしたちの夏』につづいて、この作品に出ることになって、大きな役だし、夢中だったんです」と川野さん。
「冬で、とにかく外の撮影は寒かったよね」
「寒かったです。ユキbは薄着だったのでなおさらです」
「ユキbは、どういう存在なのか謎めいていますが、不幸な環境にいて逃げるように出てきたということで、コートとかは着せなかったんです」

1

そのあと、ロケ撮影をどんなふうにおこなったかという話に。福間監督は、毎度のことですが、鈴木一博カメラマンにいかに助けられたかを語りました。もちろん、仕上げ段階での編集の秦岳志さん、音響設計の小川武さんの貢献ぶりについても。
川野さんは、印象に残っている場面として、まず、ユキとのカルタのシーンをあげました。それから、クリスマスのイルミネーションの残る夜の立川の街を歩いたシーンだそうです。

1

挨拶トークのあと、二人はロビーでパンフレットにサインをしながら、熱心な観客のみなさんと交流の時間をもちました。福間監督が毎朝書いているツイッターの詩を楽しみにしているという方もいました。
川野真樹子さんは、いま、首都大学東京の大学院にすすみ、目下の研究テーマは「映画と演劇における身体表現」だそうです。
福間監督は、このあとは、もっと広がりのある作品、物語がストレートに流れる作品も撮ってみたいと話していました。

福間監督は、川野さんや見に来てくれた大学院時代の友人と昼食をとったあと、劇場に戻って、パク・チャヌク監督の『イノセント・ガーデン』を見ました。
そのあと、遊びに来てくれたダーティ工藤監督と劇場のまわりの「ディープな横浜」を探索したとのこと。ちょうどこの日、若葉町は日枝神社のお祭りで、工藤監督はその行列を「もしかしたら次の作品に使える」とカメラに収めました。その前に、ジャック&ベティで福間監督の「友情出演」のワンショットも撮影したそうです。

夜の回は、20時25分からの上映。
上映前に福間監督が挨拶をしました。
「みなさん、ほんとうによく来てくれました。『あるいは佐々木ユキ』は、前作の『わたしたちの夏』の仕上げがすんでない段階で、どうしても撮りたくなって撮った作品なんです」とこの作品への思いを語りました。

1

途中からダーティ工藤監督も壇にあがってくれました。
二人がともに尊敬する故石井輝男監督の話も出て、「映画は、とにかく作りつづけることが大事」と工藤監督。
「ぼくの映画は、どこかで石井さんのようなB級映画も意識している。ずっと90分だったけど、今回は79分にまで詰めた。ダンスあり、インタビューあり、朗読ありと、いろんなものがそのなかに入っています」と福間監督。

この日の二回上映。数字的には、いささかさびしいスタートとなりました。
でも、さっそくツイッターにうれしい反応が次々に出ています。
『あるいは佐々木ユキ』は、確かに見る人が自分の心と対話するみたいに感想を言いたくなる映画なのです。
横浜での上映は、20日(金)まで。
16日からは20時25分からの一回上映となります。
みなさん、劇場に足を運んでください。まわりの人に宣伝してください。
どうぞ、よろしく!

宣伝スタッフ 若葉メリー
写真撮影   小林良夫
 





このページのトップヘ