STORY

20歳の女の子、佐々木ユキ。東京の郊外にひとり暮らし。中華料理店や花屋でバイトしている。高校を卒業してすぐにフランスに行ったときに知りあったコンサルタント兼探偵の織田千春と親しく、その仕事を手伝うこともある。

ユキは、アゴタ・クリストフの短篇小説「手紙」を読み、その語り手、孤児のジャックの境遇に興味をもった。ユキは福岡で家族と育った。いま、母は福岡に恋人といるが、父と兄の行方はわからない。

ある日、ユキは偶然に詩人の文月悠光の朗読を聞く。その詩「横断歩道」の言葉がユキのなかに残った。千春の大学時代の先生で、ユキのことも知っている千石先生に、ユキは自分の過去と現在の気持ちを語る。「生きていればいい」と父が言っていたことも話した。

千春の事務所には、アシスタントとして史乃が働いていた。史乃は、アンデルセンの童話「人魚ひめ」が好きだった。ユキは、文月悠光と会って「妖精みたい」だと言われるが、子どものころの遊びでは自分が「豚」だったことを思い出す。

ユキは、つきまとう大学生の香山和久に、つきあう気がないことを告げる。ユキは、千春の事務所の前にあるギャラリーで働く蔵本良平に好意を抱いているが、彼は女の子には興味がない。どうにもならない恋なのだ。

自分がほんとうに求めているものがわからないユキ。生きていればいい。それ以上に何が必要なのか。自分の主義、「佐々木ユキ主義」を書いて、千春と史乃に見せる。

ユキがアパートに帰ると、もうひとりの佐々木ユキがいた。まちがって配達されたという手紙を渡される。「この世界から消えることにする」というその手紙の署名は、K。香山かもしれないと思った。香山に会うが、そうじゃなかったようだ。そのKがついにユキの前にあらわれる。一夜をともにすごすが、翌朝、ユキが目をさますと彼の姿はなかった。

大晦日の夜、ユキはもうひとりの佐々木ユキに会う。二人はユキaとユキbになり、正月を一緒にすごしたが、ちょっとしたことから言い合いをして、ユキbは出ていってしまう。

そのころ、千春は事務所をたたみ、遠くに行くことになった。ユキは、千春がお別れにあげるというお金を断わり、魔法のスプーンをもらう。願いごとをかなえるスプーン。
「わたしはまだ豚です。どうぞ、人間にしてください」とユキは願った。

成人の日。ユキは雑踏のなかを歩いた。
生きていればいい。でも、もうすこし歩いて、もうすこしへんになってみる。


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